スギ花粉症その2

「薬局新聞」平成9年2月12日付け 花粉症・アレルギー疾患特集より


 「専門医インタビュー」に、記者と当院医師との対談記事が掲載されましたのでここにご紹介させていただきます。



 精神的ストレスの増加や栄養摂取バランスの崩れなどを原因に、アレルギー性の疾患で悩む人の数が年々増加してきている。その中でも、この季節に特に注目されるのが花粉症。以前はそれほどみられなかったものの、最近、その患者数は増加の一途をたどっているという。そこで今回は、かわい耳鼻咽喉科(東京都八王子市)の河合真院長(医学博士、日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会会員)にスギ花粉症の治療法や日常生活上のアドバイスなどについてお話をうかがった。

−− スギ花粉症というのは、どういう病気なんでしょうか。

河合 スギの花粉が抗原(アレルゲン)となって起こるアレルギー症状です。症状は、鼻ではくしゃみ、鼻水、鼻づまり。目ではかゆみ、涙目ですね。まず、スギの花粉が鼻の中に入って、抗体ができます。抗体が肥満細胞に付いていて、次にスギの花粉が入ったとき、肥満細胞がはじけて、中にあるヒスタミンなどを放出します。このヒスタミンは神経に作用すると、くしゃみ、鼻水という症状、血管に作用すると鼻づまりという症状を起こします。抗原抗体反応はもともと防御反応なんですが、それが過剰に反応するのがアレルギーということです。

−− 現在の治療法はどのようなものがありますか。
河合 鼻アレルギーの治療法は薬物療法と減感作療法と手術療法に大きく分けられますが、スギ花粉症に対しての治療法は主に薬物療法です。用いられる薬は大きく分けると、抗アレルギー剤と抗ヒスタミン剤があります。抗アレルギー剤はアレルギーの様々な過程を抑える薬で、抗ヒスタミン剤はヒスタミンの働きを抑える薬です。よく花粉症になる前には抗アレルギー剤を飲んでアレルギーになりにくくして、スギが飛んでからは抗アレルギー剤の効きが弱いので抗ヒスタミン剤を飲むといわれます。しかし、これは問違いでは ありませんが、必ずしも正しくはありません。

−− それはどういうことでしょうか。
河合 抗アレルギー剤の中にも最近は抗ヒスタミン作用を持つ薬がかなり出ているんです。本などを読んで「私はスギ花粉症が始まってしまったので、抗アレルギー剤ではなくて抗ヒスタミン剤をください」と言ってくる患者さんもいらっしゃるんです。抗ヒスタミン剤はよく効くんですが、眠気という副作用が強いんです。医師としては、なるべく眠気も少なく、かつ、ある程度は効く薬を出したいですから、抗ヒスタミン作用を持った抗アレルギー剤を出すこともしばしばあります。抗アレルギー剤の中には抗ヒスタミン作用を持たない薬もありますが、抗ヒスタミン作用を持つ薬もあるということを覚えておいていただけるとありがたいと思います。

−− 抗ヒスタミン作用を持つものと持たないものを使い分けるポイントはどういったところですか。
河合 「まだスギの花粉症に発症していないけれども、例年なるので今年は抑えたい」という場合は抗ヒスタミン作用を持たない抗アレルギー剤を出すことがしばしばあります。「もう発症しているけれども、それほど症状は強くはない」という場合は抗ヒスタミン作用を持った抗アレルギー剤を出しますね。「これは症状が強い」というときには抗ヒスタミン剤を出すような使い方が多いと思います。抗ヒスタミン剤と抗アレルギー剤を一緒に出すこともあります。

−− 副作用の心配はいかがでしょう。
河合 抗ヒスタミン剤の最も大きな副作用は眠気ですが、なかには心臓のほうに悪さをするタイプもありますので、不整脈があるとか、心臓に持病がある人は、そのことを医師や薬剤師に伝えたほうがいいと思います。

−− 抗アレルギー剤についても、長く飲んでいるとよくないという話もあるようですが。
河合 スギ花粉症に関しては、花粉が飛ぶのは長くても3〜4ヶ月ですので、その期間は飲んでもらいたいですね。その期間でしたら副作用はほとんどないというのが定説です。

−− 減感作療法はどういったものですか。
河合 減感作療法は抗原に対する反応を抑えていこうという治療法です。ただ、毎週のように注射を打っていっても、2〜3年はかかることがほとんどです。スギ花粉症の人はシーズン中以外は症状がないので、治療するのが困難ですし、やらないのが普通だと思います。最近、飲む減感作療法の研究もありますので、将来的には変わってくると思いますが。

−− 手術療法はどうですか。
河合 最近では、レーザーを使った下甲介焼灼術があります。アレルギーの症状を出す粘膜の表層を焼いて、アレルギーの場所を減らしてしまおうという治療法です。かなりいい成績が出ています。入院の必要もありませんので、難治性のアレルギーの人は考えてみるのもいいかと思います。

−− 生活面ではどのようなことが必要ですか。
河合 花粉症は抗原によって起こる病気ですから、抗原を近づけないことが大事です。外出するときはマスクやメガネをつけるということでしょう。それにスギ花粉情報が出ていますから、花粉が飛んでいるときは、できれば外出を避けることですね。花粉が飛ぶのは9時から3時頃が多いと思いますから、外出するならば夕方にするのがいいでしょう。できればコートや帽子を身に着けて、家に入るときは、必ずはたくことも大事です。意外と大事なのは布団を外に干さないことですね。外に干すと全部花粉が付いてしまいます。外でもつらいし、寝てからもつらいということになってしまいます。

−− 最後に薬局の薬剤師へのアドバイスをいただけますか。
河合 薬局でも「スギ花粉症が始まったから抗ヒスタミン剤がほしいのに何で抗アレルギー剤を出してくるんだ」という質間が出るんですね。そのときには「抗アレルギー剤ですが、抗ヒス夕ミン作用がある薬ですから、これでいいんですよ」と説明してもらえれば患者さんも安心すると思います。また、抗ヒスタミン剤の副作用に尿閉というものもありますから、前立腺肥大などの患者さんには気をつけてほしいですね。
 また、薬局で市販薬を買って飲む患者さんもあると思いますが、飲んでみても治らないときには、薬が合っていないこともあるわけですから、専門医に診てもらうように勧めてほしいですね。


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