耳は物を聞いたり平衡感覚をつかさどる器官ですが、なぜ右と左に一つずつあるのでしょう。左右対称になるようになんとなく2つあるのでしょうか。いいえ、違います。耳は2つあることによってある大事な働きをしているのです。このコーナーでは、なぜ耳が2つあるのかお話したいと思います。
耳と同じように2つある感覚器官に目があります。目は外の景色を網膜に映し出し、その情報を脳に送ります。目は1つでも外の様子が分かります。それはカメラで撮った写真と同じです。では写真と、目でみた風景との違いは何でしょうか。実際に目で見るときには奥行きを感じますね。両方の目で見ると、風景には立体感がでてきます。それは右目で見たものと、左目で見たものは全く同じではないからです。
右目右目で見る画像と、左目で見る画像とを比べると、近くの物は大きくずれ、遠くの物はあまりずれていませんね。この左右の画像のずれは脳で認識され、奥行きと感じるのです。つまり目は2つあるために、見える物がどのくらい遠くにあるのかを知ることができるのです(距離感)。
では、耳はどうでしょう。耳について考える前に、音について復習しておきましょう。私たちがふだん聞く音の正体は、空気の密と粗による振動の波です。


その波は空気中を1秒間に340m進みます。これは音速が340m/秒だということです。音は空気を伝わって鼓膜に届きます。鼓膜は振動し、内側にある耳小骨に伝わり増幅され、内耳の蝸牛にある神経細胞を興奮させて聴神経を通って脳に送られ、音として認識されるのです。耳の解剖を知りたい方はこちらをご覧下さい。
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では本題に入りましょう。左図は音がまっすぐ前から聞こえてくる様子を示しています。左の模式図は頭を上から見た様子を示しており、前に鼻があります。音が耳に向かうのを緑の直線で示してあります。左右の耳に入る音の波形を右に示しました。音の発生源である音源は正面にあるので、音源から左右の耳への距離は同じです。そのため音は両耳に同時に届き、右耳と左耳で全く同じ音が聞こえます。このとき脳は、音が正面から来たのだと認識するのです。 |

音がやや右から聞こえる様子を示しました。左の模式図をご覧下さい。左右の耳は離れているために、音が左耳に届くためには、右耳よりもさらに赤線の部分だけ長く空気中を進む必要があります。そのため音はまず右耳で聞こえ、少し遅れて左耳で聞こえることになります。右の波形を見てみましょう。同時刻でみてみると、右耳が黄点を聞いているときには、左耳は少し前の波形の赤点を聞いていることになります。右耳で聞いている音と左耳で聞いている音は全く同じではないのです。この微妙な音のズレ・違いを脳で処理し音の方向として認識しているのです。この例では、音が少し右から聞こえていると認識されます。

さらに右よりに音源があると、左耳に届く音はさらに遅れます。左模式図の赤線の距離が伸び、右波形での左耳の赤点はさらに遅れています。左右の音のズレはさらに増え、脳ではより右側から音が聞こえたと認識されるのです。

音源が真横にあるときには左耳に届く音の遅れは最大となります。上模式図の赤線の距離は最も長くなり、下の波形には音が大きく遅れている様子が表されています。左右の音のズレは最大となり、脳では真横の右から音が聞こえたと認識されます。
つまり、左右で同じ音がどれくらい時間がずれて聞こえているのかを脳が判断し、それを音源の方向として認識しているのです。耳は2つあることによって音の方向を知ることができるのです(方向感)。

では、純音を使って実験してみましょう。同じ音を左右で少し時間をずらして聞いてみましょう。左右の音は正確に同じ大きさで出る必要があるので、ヘッドホンで聞いて下さい。(どうしても外部スピーカーで聞かれるときは、左右を正確に同じ大きさに調整し、頭の両側、耳の横において聞いて下さい。)ブラウザはインターネットエクスプローラをお勧めします。ネットスケープでも十分可能ですが、少し割れたような音になります。再生ボタンを押して何度も聞いてみましょう。
| No.1 | 00 00 (192K) | 左右から全く同じ音を出しています。 | 頭の真ん中から聞こえます。 |
| No.2 | 15 00 (192K) | 左から出る音を15/48000秒遅らせています。 | やや右から聞こえます。 |
| No.3 | 30 00 (192K) | 左から出る音を30/48000秒遅らせています。 | 右から聞こえます。 |
| No.1 | 00 00 (192K) | 左右から全く同じ音を出しています。 | 頭の真ん中から聞こえます。 |
| No.4 | 00 15 (192K) | 右から出る音を15/48000秒遅らせています。 | やや左から聞こえます。 |
| No.5 | 00 30 (192K) | 右から出る音を30/48000秒遅らせています。 | 左から聞こえます。 |
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注) 250Hzの音で作成しています。 48000で割っているのは、48000Hzサンプリングで音を作成しているためです。 30/48000秒(625マイクロ秒)で音は21.25cm進みます。 |
どうでしょう。音が右に寄ったり、左に寄ったりして聞こえましたか。音の違いがわかりにくいときは、00 00と00 30、00 00と30 00、30 00と00 30などを聞き比べてみて下さい。また、左右のヘッドホン、スピーカーからは正確に同じ音量で音が出ている必要があります。
補足)左右から聞こえる音の大きさの相違も、方向感に影響を与えています。